水を聴いて風を見る暮らし「草原の実験」
時々、都会から離れて森に行くことがある。
車から降りて、獣道をしばらく進んだところであることに気がつく。
急に、耳が良くなった。
木々のざわめき、虫の音、鳥の声、川のせせらぎ、繊細な音の一つ一つがはっきりと聞き分けられる。
普段は聞かない音だから少し不思議だ。
けれどもしかしたら遠い昔の遺伝子の記憶が耳に残っているのかもしれない。
森で暮らしていた頃の、遠い記憶が。
「草原の実験」は、そんないつかの記憶に、耳から、目から、触れられる映画だ。
辺りが暗くなり、映画が始まる。
すると目の前には、限りない平原が広がる。高い木はほとんどない。
芝生の先にある地平線から乾いた風がまっすぐに吹いてくる。
その中心にぽつんと建つ家。そしてそこで暮らす屈強な父親と、美しい少女。
二人は変わらない日常を送る。日が昇るごとに父親は出かけていき、ぼろぼろになって帰ってくる。
少女は出迎えて、父親を労わる。
倒れるように座り込んだ彼の足を洗い、眠ってしまった肩に毛布をかけ、汚れた服を洗濯する。
小さな背中はきっとすごく温かい。
どこか神秘的な気配すら漂う大草原でおくられる穏やかな生活。
この映画の人々は誰一人としてセリフを話さない。
息遣いや微細な表情の変化から感情を読み取るしかないけれど、それによって映画にどんどん引き込まれていく。
この映画の好きなところは、彼らのなんでもない動作が印象的に映されるところ。
ベッドで寝返りを打つ
洗濯物を干す
足を洗う手元
これを勝手に”生活の仕草”と呼ぶことにする。
それを見つめているのが、すごく心地よい。
昔、母が台所で野菜を切っているのがおもしろくて、手伝いもせずじっと手元を見ていたことを思い出した。
”生活の仕草”をぼんやりと見ながら、次第に映画の音にも耳を澄ます。
洗うときの水の音
紐を切るハサミの音
衣擦れ
馬の蹄の音
むかし聴いていたかもしれない、生活の音。どんどん引き込まれていく。
もしかしたら、扉の外に草原が広がっているかもしれないと本気で思うほどに。
しかしこの映画は、そんな牧歌的な生活を讃えるような映画ではない。
「草原の実験」とは何の実験なのだろう?
綿に包まれたような優しい生活に暗い影が迫る。
銃を持った男たち、馬に乗った青年、青い目の異邦人。
「草原の実験」とは何か、最後には答えを知ることになるだろう。
物語が次々に展開していく情報量の多い映画とは対極とも言える静かな映画。
草原に住まう彼らの”生活の仕草”を目で追い、水や風、草、布、鉄といった様々な素材から出る音に耳を澄ます。
一瞬一瞬の時間が引き伸ばされ、大自然に足を踏み入れた時の鋭敏な感覚が蘇る。
私たちも草原の住民の一人になっていく。
これがどうして面白いのか、それを誰かに説明するのがすごく難しい映画だと思う。
どちらかと言えば自分の胸の奥深くにそっと置いておきたいような一作。
ぜひ、外界から切り離された映画館で観てみてほしい。
異国の生活なのにかつて経験したことがあるような…不思議な感覚をきっと味わえるだろう。
スタッフ:德丸

7月のラインナップ

2022.7.11(月)-7.24(日)以外は、チケットは11時販売開始です。
2022.7.11(月)-7.24(日)は9時チケット販売開始です。
・チケットは当日券のみ
・支払いは現金のみ
・スクリーンの部屋は飲料のみ持ち込み可(館内販売無し)
小さい映画館です。座席42席。
スクリーンも小さいです。 ロビーも狭いです。
ご不便おかけしますが、予めご了承くださいませ。
【みんにゃで楽しむために!】
映画館は常時換気されています。
上映毎座席消毒しています。
ロビーの机、トイレ、ドアノブなども適宜消毒しています。
お客様には、入場前に手のアルコール消毒のご協力と
飲食時以外はマスクを着用下さい。
体調が悪い時は外出せず、元気な時にお出かけしましょう!

接触を少なくする対策を取り、スクリーンのある部屋だけでなくロビーも受付内も常時換気です。
ご来館者さまもどうか消毒とマスク着用で安心して皆様が楽しめるようお願い申し上げます。
【大須シネマ 通常上映時】
☆上映10分前になりましたら、チケットに記載の番号順にお呼び致します。
お呼びした時点で劇場内にいらっしゃらない場合は、次の番号をお呼びすることがございます。
予めご了承ください。
☆席は自由席です。
※チケット代:1,400円(映画によって変わる場合あります)
※館内はスクリーンのある部屋、ロビー、受付全部常時換気
※上映毎座席消毒
演目・イベントによって飲食可否変更し、座席数の調整を致します。
予めご了承ください。
----------------------------------------------
大須シネマ(席数42)
営業時間:11:00~チケット販売開始
※映画により営業時間の変更あります(年中無休)
劇場:名古屋市中区大須3-27-12
電話:052-253-5815
※上映開始前は電話に出られないことがあります。
※ブログコメントにはお答えできないこともあります。
予めご了承ください。
ホームページ:http://www.osucinema.com/
Twitter:https://twitter.com/osucinema
Instagram:https://www.instagram.com/osucinema/
---------------------------------------------
車から降りて、獣道をしばらく進んだところであることに気がつく。
急に、耳が良くなった。
木々のざわめき、虫の音、鳥の声、川のせせらぎ、繊細な音の一つ一つがはっきりと聞き分けられる。
普段は聞かない音だから少し不思議だ。
けれどもしかしたら遠い昔の遺伝子の記憶が耳に残っているのかもしれない。
森で暮らしていた頃の、遠い記憶が。
「草原の実験」は、そんないつかの記憶に、耳から、目から、触れられる映画だ。
辺りが暗くなり、映画が始まる。
すると目の前には、限りない平原が広がる。高い木はほとんどない。
芝生の先にある地平線から乾いた風がまっすぐに吹いてくる。
その中心にぽつんと建つ家。そしてそこで暮らす屈強な父親と、美しい少女。
二人は変わらない日常を送る。日が昇るごとに父親は出かけていき、ぼろぼろになって帰ってくる。
少女は出迎えて、父親を労わる。
倒れるように座り込んだ彼の足を洗い、眠ってしまった肩に毛布をかけ、汚れた服を洗濯する。
小さな背中はきっとすごく温かい。
どこか神秘的な気配すら漂う大草原でおくられる穏やかな生活。
この映画の人々は誰一人としてセリフを話さない。
息遣いや微細な表情の変化から感情を読み取るしかないけれど、それによって映画にどんどん引き込まれていく。
この映画の好きなところは、彼らのなんでもない動作が印象的に映されるところ。
ベッドで寝返りを打つ
洗濯物を干す
足を洗う手元
これを勝手に”生活の仕草”と呼ぶことにする。
それを見つめているのが、すごく心地よい。
昔、母が台所で野菜を切っているのがおもしろくて、手伝いもせずじっと手元を見ていたことを思い出した。
”生活の仕草”をぼんやりと見ながら、次第に映画の音にも耳を澄ます。
洗うときの水の音
紐を切るハサミの音
衣擦れ
馬の蹄の音
むかし聴いていたかもしれない、生活の音。どんどん引き込まれていく。
もしかしたら、扉の外に草原が広がっているかもしれないと本気で思うほどに。
しかしこの映画は、そんな牧歌的な生活を讃えるような映画ではない。
「草原の実験」とは何の実験なのだろう?
綿に包まれたような優しい生活に暗い影が迫る。
銃を持った男たち、馬に乗った青年、青い目の異邦人。
「草原の実験」とは何か、最後には答えを知ることになるだろう。
物語が次々に展開していく情報量の多い映画とは対極とも言える静かな映画。
草原に住まう彼らの”生活の仕草”を目で追い、水や風、草、布、鉄といった様々な素材から出る音に耳を澄ます。
一瞬一瞬の時間が引き伸ばされ、大自然に足を踏み入れた時の鋭敏な感覚が蘇る。
私たちも草原の住民の一人になっていく。
これがどうして面白いのか、それを誰かに説明するのがすごく難しい映画だと思う。
どちらかと言えば自分の胸の奥深くにそっと置いておきたいような一作。
ぜひ、外界から切り離された映画館で観てみてほしい。
異国の生活なのにかつて経験したことがあるような…不思議な感覚をきっと味わえるだろう。
スタッフ:德丸

7月のラインナップ

2022.7.11(月)-7.24(日)以外は、チケットは11時販売開始です。
2022.7.11(月)-7.24(日)は9時チケット販売開始です。
・チケットは当日券のみ
・支払いは現金のみ
・スクリーンの部屋は飲料のみ持ち込み可(館内販売無し)
小さい映画館です。座席42席。
スクリーンも小さいです。 ロビーも狭いです。
ご不便おかけしますが、予めご了承くださいませ。
【みんにゃで楽しむために!】
映画館は常時換気されています。
上映毎座席消毒しています。
ロビーの机、トイレ、ドアノブなども適宜消毒しています。
お客様には、入場前に手のアルコール消毒のご協力と
飲食時以外はマスクを着用下さい。
体調が悪い時は外出せず、元気な時にお出かけしましょう!

接触を少なくする対策を取り、スクリーンのある部屋だけでなくロビーも受付内も常時換気です。
ご来館者さまもどうか消毒とマスク着用で安心して皆様が楽しめるようお願い申し上げます。
【大須シネマ 通常上映時】
☆上映10分前になりましたら、チケットに記載の番号順にお呼び致します。
お呼びした時点で劇場内にいらっしゃらない場合は、次の番号をお呼びすることがございます。
予めご了承ください。
☆席は自由席です。
※チケット代:1,400円(映画によって変わる場合あります)
※館内はスクリーンのある部屋、ロビー、受付全部常時換気
※上映毎座席消毒
演目・イベントによって飲食可否変更し、座席数の調整を致します。
予めご了承ください。
----------------------------------------------
大須シネマ(席数42)
営業時間:11:00~チケット販売開始
※映画により営業時間の変更あります(年中無休)
劇場:名古屋市中区大須3-27-12
電話:052-253-5815
※上映開始前は電話に出られないことがあります。
※ブログコメントにはお答えできないこともあります。
予めご了承ください。
ホームページ:http://www.osucinema.com/
Twitter:https://twitter.com/osucinema
Instagram:https://www.instagram.com/osucinema/
---------------------------------------------
スポンサーサイト