すべてが過去になる街で僕たちは滞る『鉄コン筋クリート』

東仁王門通りの中腹には大須商店街をぶった切る大きな道路が走り、その頭上には『大須』と書かれたデカ提灯が鎮座している。
この提灯はネオンサインの装飾が施してあり、夜になると赤い光が宙に浮かぶ。
その丁度下あたりに現在大須で大流行している栗スイーツの店がある。
だがその店が元は何だったか覚えているものはない―
『鉄コン筋クリート』という映画はかなり大須だ。
舞台は「宝町」と呼ばれる街だ。
昭和とスチームパンクを混ぜ合わせたような見た目で、退廃的な雰囲気が漂っている。
商店街、銭湯、民家など、昭和を想起させる建物がギュウギュウに肩を並べている。
街中がどこかの広告や誰かの落書きで溢れ、ヤクザが闊歩する。
昭和を生きた世代が一目見れば、懐かしさに胸を熱くするはずだ。
だがそんな街も年を取り、開発が始まる。
区を一つ潰し、大きなテーマパークを誘致するらしい。
この街を愛する者たちは時代の奔流に呑まれ、少しずつ狂っていくのだった。
……………
大須ほど新陳代謝の激しい街は他に無いだろう。
どこかで流行が生まれた途端に店の並びが新しくなり、かつて何があったのか忘れ去られる。
今ある流行りの店もやがて姿を消し、数年後には、新たな流行がやってくる。
とにかく何でもWELCOME。
これから先も、新たな国、新たな食べ物、新たなファッションの店が大須の軒並みを賑わせていくだろう。
その影でひっそりと、消える店もあるだろう 。(大須シネマがそうならないよう願う・・・)
そうして何処へ行きつくのだろう?
新しいものを吸い込みすぎて、この街の歴史は少しずつ死んでいく。
京都のような風情も、東京のような先進性も持ちえず、大須はただ膨張と破裂を繰り返す。
僕たちの求める「変化」とは、「change」ではなく「improve」なのだとなんとなく分かってきたように思う。
闇雲な変化は、停滞と何ら変わらないのだ。

・・・・・・・・・
宝町の物語は、主に孤児の兄弟を通して語られる。
兄であるクロは、街が変わるにつれ暴力的に。
弟のシロは純粋な心を持ち続け、兄を心配する。
二人は毎日を必死に生きている。
この映画は、一つの時代の終焉を描いた映画だ。
開発による破壊で、そこを愛した人々の時代は終わる。
今を守ろうと足掻いても、どうしようもなく街は変わっていく。
だかそんな重い空気を、クロとシロの飛翔が吹き飛ばす。
二人は手足のみで屋根から屋根へ飛び移り、天まで届く時計台から空へダイブする。
青い空、眼下の街、風を切り裂き、その瞬間だけは自由になるのだ。
そうしてクロとシロはどこへ行きつくのか。
大須もどこへ行きつくのか。
この街の風に乗って進んだ先に、どこに行きついたのか僕たちは知ることができるだろうか 。
-------
文:ときおたろうまる
編集:編成担当S
-------
大須シネマ上映スケジュール
☆2020.9.14-9.20
「アンクル・ドリュー」12:00~
「鉄コン筋クリート」14:20~
「ピンポン」19:10~
※チケット代:1,400円
※館内はスクリーンのある部屋、ロビー、受付全部常時換気
※上映毎座席消毒
----------------------------------------------
大須シネマ(席数42)※コロナ対策でしばらく席数半分に致します
営業時間:11:30~チケット販売開始
※映画により営業時間の変更あります(年中無休)
劇場:名古屋市中区大須3-27-12
電話:052-253-5815
※上映開始前は電話に出られないことがあります。
※ブログコメントにはお答えできないこともあります。
予めご了承ください。
ホームページ:http://www.osucinema.com/
Twitter:https://twitter.com/osucinema
Instagram:https://www.instagram.com/osucinema/
----------------------------------------------
スポンサーサイト